音の実体

一言でいえば、音とは空気が振動する現象です。

具体的に述べますと、ものをたたくといった何かのきっかけで空気が押されて、押された空気が密集して、まわりより圧力の高い部分ができます。この部分を密と呼びますが、密の部分が隣の空気を押して、そこがまた密になり、さらにその隣の空気を押す、ということが繰り返されます。逆に、密と密の間には、空気がまばらで圧力の低い部分ができますが、これを疎と呼びます。このようにして密の部分と疎の部分が交互に生まれて、空気の弾性(押し縮めたり引き伸ばしたりすると、もとの体積に戻ろうとする性質)によって、密と疎が空気中の波、すなわち音波として次々と伝わっていきます。

始めに、音とは空気が振動する現象であると書きましたが、振動するのは空気とは限りません。音を伝える物質を媒質といいますが、空気以外の気体や、固体あるいは液体も媒質となり得ます。媒質がないと音は伝わりませんので、真空中では音は発生しません。

このように、気体、固体、液体のいずれも音の媒質となり得ますので、それに対応して、音は、空気伝搬音(または空気音)、固体伝搬音(または固体音)、水中伝搬音(または水中音)に区別されます。マンションでの騒音紛争の場合に、固体伝搬音が問題となることがよくあります。

厳密な定義としては、音波というのは媒質中を伝わる弾性波という物理現象であり、その音波によって人が感じる「音が聞こえる」という感覚が音です。しかし、一般的には、音という言葉は、音波と、音波によって引き起こされる感覚の両方を意味します。