騒音測定(2)・・・使用する騒音計の問題(計量法16条1項)

この項では、騒音測定に使用できる騒音計についての法律上の条件を説明します。

1 計量法16条1項の規定
計量法16条1項に、以下のような規定があります。なお、カッコ内は特殊な場合についての規定で、通常は考える必要がありませんので、省略します。

「次の各号の一に該当するもの(カッコ内省略)は、取引又は証明における法定計量単位による計量(カッコ内省略)に使用し、又は使用に供するために所持してはならない。

一 計量器でないもの

二 次に掲げる特定計量器以外の特定計量器
イ 経済産業大臣、都道府県知事、日本電気計器検定所又は経済産業大臣が指定した者(以下「指定検定機関」という。)が行う検定を受け、これに合格したものとして第72条第1項の検定証印が付されている特定計量器
ロ 経済産業大臣が指定した者が製造した特定計量器であって、第96条第1項(カッコ内省略)の表示が付されているもの

三 第72条第2項の政令で定める特定計量器で同条第1項の検定証印又は第96条第1項の表示(以下「検定証印等」という。)が付されているものであって、検定証印等の有効期間を経過したもの」

これはかなりわかりにくい条文ですが、この内容は次の2つに分けて考えることができます。
① 「取引又は証明における法定計量単位による計量」について、
② 「使用あるいは使用するために所持してはならないもの」が示されている。

まず、①について、「取引」「証明」「法定計量単位」「計量」といった用語については計量法に定義条項がありますが、煩雑になりますので省略し、環境省の見解を紹介しますと、同省は、「…騒音を測定・評価し、公表することは計量法上の証明に当たることから、計量法の観点からも有効期間内の検定証印等が付されていない騒音計は使用することができない(計量法第16条)。」と述べています(「騒音に係る環境基準の評価マニュアル 一般地域編」(平成27年10月)3頁)。
従って、この環境省の見解によれば、騒音を測定・評価し、公表することは計量法上の証明、すなわち上記の「(取引又は)証明における法定計量単位による計量」に該当します。

次に②について、使用あるいは使用するために所持してはならないものとして、3つがあげられています。
これも複雑な規定ですが、要点は、
・計量器でないもの
・検定を受けていない計量器
・検定を受けているが、検定の有効期間が切れた計量器
を、使用(あるいは使用するために所持)してはならない、という規定です。

このように、計量法16条1項は、全体として、「騒音を測定・評価し、公表するには、検定を受けており、かつ検定の有効期間が経過していない計量器を使用しなければならない」ということを定めています。

この文章の中の「計量器」とは、「計量をするための器具、機械又は装置」であると定義されています(2条4項前段)。従って、スマートホンの騒音計アプリは、計量器とはいえず、その点で計量法16条1項の要件を満たさないと思われます。

次に、検定とは、通常は一般財団法人日本品質保証機構が行うものです(同機構は、上記の16条1項の条文中の「指定検定機関」です)。そして、騒音計の場合は、検定の有効期間は5年間です。

以上をまとめると、騒音の測定には、一般財団法人日本品質保証機構の検定に合格し、かつその検定から5年間を経過していない騒音計を使用しなければならない、ということです。

従って、計量法16条1項によれば、騒音の測定業者が騒音測定を請け負って作成する測定結果報告書には、必ず使用した騒音計の検定合格証のコピーを添付すべきであると思われますが、実際には、検定合格証のコピーが添付されている報告書はほとんどありません。