音響校正器による校正方法(環境省のマニュアル)

前回は、音響校正器による校正に関して、JIS Z 8731:1999とJIS Z 8731:2019の違いについて書きました。

今回は、現在の規定であるJIS Z 8731:2019に即して、音響校正器による校正の方法について書きます。

前回書いた通り、JIS Z 8731:2019の規定は、以下の通りです。

「音響校正器 マイクロホンを含めて騒音計が正常に動作することを音響的に確認するため、騒音計の取扱説明書(それに類する文書を含む)に記載された形式で、JIS C 1515に規定するクラスⅠ又はクラスLSのものを使用する。

なお、音響校正器は、3年を超えない周期で定期的に校正されているものを使用する。音響校正器の使用時の留意点は、対象とする騒音の種類ごとに、測定マニュアルなどを参照するとよい。」

このように、JIS Z 8731:2019自体は、音響校正器による校正の具体的な方法については何も述べておらず、「測定マニュアルなど」にゆだねています。

まず、音響校正器及び騒音計の取扱説明書の記述を見ますと、私が使用している音響校正器NC-74(リオン㈱製)と精密騒音計NA-28( 同社製)の取扱説明書は、いずれも、音響校正器が発信している音量(94.0 dB)と騒音計の指示値が異なっている場合には、騒音計の機能を使って指示値を合わせる(すなわち、94.0 dBを指すようにする)ように指示されています。

これに対して、前回も引用した「騒音に係る環境基準の評価マニュアル 一般地域編」(平成27年10月、環境省)は、考え方が異なります。このマニュアル13ページには、以下の記述があります。

「騒音計の表示値と取扱説明書に記載されている値との差が±0.7 dB 以上異なっている場合、故障している可能性があるため騒音計の点検修理が必要である。」

「本マニュアルによる測定では、操作ミス防止の観点から、レベル指示値の調整が適切に行われていることを前提として、測定現場において音響校正器を用いて騒音計のレベル指示値の調整は原則として行わない。」

これらの記載によれば、上記の取扱説明書とは異なり、測定現場では、誤差が±0.7 dB  未満であれば、指示値の調整はせずにそのまま測定を行う、他方、誤差が±0.7 dB 以上の場合には、騒音計が故障している可能性があるため、測定は行わず、騒音計の点検修理を行う、ということになります。

上記の「レベル指示値の調整」とは、測定現場ではなく、測定の実施に先がけて、手元や環境が安定した場所において取扱説明書に従って実施される、騒音計の指示値を音響校正器の音量に合致させる行為(前述した、NC-74やNA-28の取扱説明書に記載されている行為)です。平生はこれを実施する一方、測定現場では、誤差が±0.7 dB  未満であることを確認した上で、誤差の調整はせずに測定を実施する(誤差が±0.7 dB  以上であるときは騒音計の点検修理を行う)ということになります。

この方法によると、万一測定現場で誤差が±0.7 dB 以上であった場合には測定を中止しなければならないことになって、大変なことになります。けれども、私の経験では、現場での誤差は最大でも±0.2 dB 程度にとどまっていますので、誤差が±0.7 dB 以上になるようなことはまずないと思います。

 

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