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「悪臭」という感覚は後天性である

2020-07-20

新村芳人著「嗅覚はどう進化してきたか」(岩波書店・岩波科学ライブラリー)の66ページ以下に、次のような興味深い話が載っています。

味覚について、人がある味を好ましいと思うかどうかの反応は、後天的に学習するのではなく、遺伝的にプログラムされたものであるとされています。

また、嗅覚についても、マウスについては、後天的なものではない先天的な悪臭(いわば「絶対的な悪臭」)が存在することが実験により確かめられています。

しかし、人間の場合には、このような絶対的な悪臭は存在しないというのが多くの研究者の考えです。

このことを示す実験として、2つのビデオ上映ボックスにそれぞれバラの香りと糞便の臭い(スカトール)を充満させ、幼児にそれぞれのボックスで同じ内容のビデオを見せたあと、どちらのボックスでもう一度ビデオを見たいと思うかを選んでもらうと、結果は半々であり、どちらのボックスをより好むという傾向は見られなかった(他方、母親に同じ実験をすると、9割近くの人は糞便の臭いのボックスをより不快に感じた)ということです。

糞便の臭いは、トイレという汚くて避けるべき場所といつも一緒に現れるため、脳が糞便の臭いを避けるべきものと感じるようになり、そのために人は糞便の臭いを不快に感じるようになる、ということだそうです。このことは「連合学習」と呼ばれます。「連合」とは、2種の刺激の組み合わせを意味します。

もしも私が「解説悪臭防止法」の執筆中にこの本を読んでいたら、当然この話を紹介していたでしょうが、この本は「解説悪臭防止法」の出版の翌年の2018年に出た本です。

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