まえおき
スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの空調用室外機や、商品陳列用冷蔵・冷凍ケース用の室外機は、低周波音の発生源として非常によく問題となります。
室外機からの音については、被害を受けている方が騒音の問題だと思っておられる場合もあります。けれども、むしろ、その音に含まれる低周波音成分のほうが大きな被害をもたらしていることが多いため、騒音だけでなく低周波音の問題も検討する必要があります。以下には、室外機から発生する低周波音を念頭において記述します。
解決までの大まかな流れ
音の測定・記録
まず、室外機から発生する騒音あるいは低周波音を測定し、客観的で信用性ある証拠を残すことが重要です。測定については、騒音・低周波音・振動の被害の測定の方法と費用についてをごらんください。
測定結果(低周波音の測定値)が、環境省の参照値あるいは国際規格の感覚閾値を上回っていれば、低周波音による被害が生じていることを主張するに十分な証拠といえます。
話し合い
低周波音の証拠が確保できたら、次の段階としては、室外機の設置者(通常は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの経営者)と話し合って、低周波音への対策をしてもらい、被害をなくすか、あるいは少なくとも減らすようにしてもらうことです。
ここで重要なことは、低周波音の対策は、騒音の対策とは異なるということです。たとえば、騒音対策として設置された防音壁は、低周波音を防ぐ効果はほとんどないことが多いです。かえって、防音壁を設置したことによって、騒音が軽減されたけれども低周波音は軽減されなかった結果、それまでは騒音によってある程度紛れていた低周波音がいっそうはっきりと感知されるようになった結果、低周波音の被害がかえって深刻になってしまうということも珍しくありません。
そこで、低周波音の対策は、専門家や専門業者(音響コンサルタントと呼ばれます)に依頼して、何デシベルの低周波音がどの程度あるかを把握した上で、適切な対策を立案してもらう必要があります。
騒音を出している側であるスーパーマーケットやコンビニエンスストアの経営者は、通常はこのような音響コンサルタントを知りませんので、被害者の弁護士の側から、信頼できる音響コンサルタントを紹介することもあります。
ただ、通常の騒音に比べて、低周波音は防音壁で防ぐことは難しいといわれます。これは、技術的には可能だけれども、分厚いコンクリートの防音壁が必要であるため、設置することが物理的あるいは経済的に無理であるため、実際上は不可能であることが多いという意味です。
そこで、室外機による低周波音の被害の現実的な対策は、発生源の移設であるということもしばしばあります。
公的手続
話し合いで解決できなければ、公的手続をとるしかありません。公的手続の種類やそれらのメリット・デメリットについては、騒音・振動・低周波音・悪臭トラブルのさまざまな解決方法をご覧ください。
円満に解決したい方へ
近隣間の低周波音紛争のすべてに当てはまることですが、近隣関係はずっと続くものですので、なるべくなら将来に禍根を残さず、円満に話し合いで解決することが望ましいと言えます。
そのためには、本人同士で話し合うよりは、弁護士に依頼することをお勧めします。その理由は、弁護士に相談するメリットをご覧ください。
弁護士に相談するメリット
騒音の証拠化(測定・記録)
騒音計による低周波音の測定等による証拠化は、被害者ご本人にはもちろん、地方公共団体の公害苦情相談担当者や、騒音測定業者でも困難です。その理由については、騒音・低周波音・振動の被害の測定の方法と費用についてをご参照ください
測定は、低周波音問題を多数手がけ、知識やノウハウを蓄積している当事務所にお任せください。
話し合い
相手方(室外機を設置しているスーパーマーケットなどの経営者)と話し合いをする場合でも、弁護士に依頼するメリットは大きいです。本人同士での話し合いでは、生の感情がぶつかり合い、ときには過去のいざこざ(音に関するものとは限りません)が持ち出されたりして、かえって話がこじれ、解決が難しくなってしまうことが珍しくありません。
そこで、冷静に物事を見ることができる第三者であり、かつ紛争解決の専門家である弁護士が代理人として話し合うことによって、話がこじれることなく円満な話し合い解決をすることが容易になります。
公的手続
話し合いで解決できず、公的手続に移行せざるを得ない場合にも、弁護士に依頼するメリットは大きなものがあります。
まず、騒音・低周波音・振動・悪臭の解決方法で述べた通り、公的手続の選択肢は複数ありますので、どの手続をとるべきかを決めなければなりません。
次に、手続が決まったとして、それぞれの機関に提出すべき書面(申請書・申立書や書証)を作成しなければなりませんし、手続の開始後も多数の書面(準備書面、主張書面、書証等)を提出する必要があります。さらに、期日において、裁定委員・調停委員等の人から発せられる質問等に対して、的確な回答や説明、意見の表明等をしなければなりません。
専門家でない被害者ご本人がこのようなことを行うのは至難のことですが、経験豊富な弁護士に御依頼いただければ、各手続の利害得失を御説明して、どの手続をとるかを決めるためのアドバイスをしますし、書面の作成や期日への出席はもちろん弁護士が行います(期日には御本人も出席できますし、弁護士のほうから出席をお願いすることもあります)。
損害賠償請求をしたい場合
被害者の方の多くは、低周波音の被害をなくしてもらうことが第一だとお考えになりますが、それと合わせて損害賠償請求をしたいとお考えの方もおられます。また、低周波音の被害は今はなくなっているが、過去の被害について損害賠償請求をしたいという場合もあります。
損害賠償請求は、低周波音の被害をなくす(あるいは減らす)こととは異なった考慮をしなければならない問題です。何を損害として請求するのか(慰謝料すなわち精神的損害についての賠償か、医療費や薬代、あるいは引っ越し費用等の実費か)、どのような局面か(話し合いなのか、公的手続か)等によっても異なります。
従って、個々の事案の事情に応じた検討が必要ですので、損害賠償請求をしたいとお考えの方は、早期に当事務所に御相談いただくことをお勧めします。