7月9日付朝日新聞朝刊の国際面に、「コケコッコー騒音? 仏で論争」という記事がありました。フランス西部のリゾート地であるオレロン島で、隣家の雄鶏の鳴き声が「騒音」だとして、別荘に夏の間だけ暮らす夫婦が雄鶏と飼い主を相手取り、雄鶏を別の場所に移すよう求める訴えを裁判所に起こしたというものです。
動物の鳴き声に悩まされているという御相談や御依頼をお受けすることはときどきあります。それらの案件で問題となったのは、犬の鳴き声や、鳥の鳴き声などで、ペットとして飼われている動物の他、ブリーダーが事業として飼っている動物の鳴き声の事件もあります。
この記事で面白いのは、飼い主だけでなくその雄鶏も被告になっているらしく、飼い主が「雄鶏には歌う権利がある」と主張しているとのことです。日本では、動物を被告として訴えることはできません。
また、原告は、雄鶏を別の場所に移すことを求めているそうですが、この主張も日本の裁判所では認められません。日本では、動物の鳴き声が騒音であるとして差止めの裁判を起こすとしたら、「何デシベルを超える鳴き声を原告の自宅敷地内に侵入させてはならない」という趣旨の判決を求めることになります(「抽象的不作為請求」と呼ばれます)。原告の被害をなくすためにはそれで必要十分だからです。それを超えて、動物自体を他に移せという請求が認められることはないと思います。