6月18日に、東京地裁は、東京都練馬区の住民が近隣の保育所からの騒音について差止めや損害賠償を求めた訴訟について、訴えを棄却する判決を言い渡しました(6月19日付朝日新聞朝刊)。
騒音被害を訴える訴訟では、原告(つまり被害者側)が勝訴した事例がマスメディアで報道されることはこれまでしばしばありましたが、原告が敗訴した裁判が報道されるのは珍しいと思います。
この裁判で気になるのは、東京都の環境確保条例との関係です。環境確保条例の定める騒音の規制基準は、騒音の種類や発生源を問わずに適用されるのが原則ですが、2015年の改正により、保育園や幼稚園等からの子供の声などには規制基準が適用されないことになりました。
これは、保育園や幼稚園等の騒音については規制を緩和するという姿勢の現れと思われます。このような東京都の姿勢が、裁判所の判断に影響を及ぼすのかどうかが気になります。
また、騒音紛争において、受忍限度の判断はさまざまな事情を総合的に考慮してなされるものですが、実際問題としては、その音量が法令上の規制基準値を超えているかどうかが重要視されます。上記のように、保育園や幼稚園等の騒音には環境確保条例の規制基準値が適用されないと明記されている中で、裁判所が保育園や幼稚園等の騒音の受忍限度の判断に際し、この規制基準値を考慮するのかどうかも注目されます。
報道の一部には、今回の判決が受忍限度の判断に際して環境確保条例の規制基準値を考慮したと述べたものもあります。
今回の判決が、判例雑誌や判例データベース、あるいは裁判所の公式サイトの判例紹介に掲載されることを期待したいと思います。