JIS Z 8731には、騒音計の校正(検査)に関する定めがあります。この点について、JIS Z 8731:1999と、JIS Z 8731:2019では大きな変更があります。
その違いに触れる前に、そもそも校正とは何かについて説明します。
法律(計量法)上は、騒音の測定結果を証明するための要件は、検定に合格しており、かつ検定の有効期限(5年間)内の騒音計を使用することです(騒音・低周波音・振動・悪臭問題の弁護士ブログ)。
しかし、JIS Z 8731では、測定時に騒音計の検査をすることが求められています。つまり、騒音計が5年に一度の検定に合格さえしていればよいというわけでなく、それに加えて、個々の測定のときにも騒音計の検査をする必要があるわけです。この検査が校正です。
この校正には二通りがあります。一つは音響校正器という機器を使う方法で、騒音計のマイクロホンに音響校正器を取り付け、この音響校正器を作動させると、音響校正器は、あらかじめ定められた音量の音を発信します。その音をマイクロホンが感知して、その音量を騒音計が表示しますので、表示された音量が所定の音量(音響校正器が発信した音量)に一致するかどうかをチェックします。ただし、完全に一致しなければならないわけではなく、ある程度の誤差は許容されます。
もう一つの方法は、音響校正器のような外部機器は使わず、騒音計に内蔵された電気信号発信機能によって電気信号を発信し、騒音計が所定の数値(デシベル)を表示するかどうかをチェックする方法です。この方法は、マイクロホンを介しませんので、マイクロホンの機能の検査はできません。
さて、校正に関するJIS Z 8731:1999(改正前)の規定は、以下の通りです。
「校正 すべての測定器は校正を行う必要がある。その方法は、測定器の製造業者が指定した方法による。測定器の使用者は、少なくとも一連の測定の前後に現場で検査を行わなければならない。その場合、マイクロホンを含めた音響的な検査を行うことが望ましい。」
次に、JIS Z 8731:2019(改正後)の規定は、以下の通りです。
「音響校正器 マイクロホンを含めて騒音計が正常に動作することを音響的に確認するため、騒音計の取扱説明書(それに類する文書を含む)に記載された形式で、JIS C 1515に規定するクラスⅠ又はクラスLSのものを使用する。
なお、音響校正器は、3年を超えない周期で定期的に校正されているものを使用する。音響校正器の使用時の留意点は、対象とする騒音の種類ごとに、測定マニュアルなどを参照するとよい。」
これらの規定を比較すると、次のことが言えます。
1)音響校正器の使用の義務化
前述した通り、校正には、音響校正器を使用する方法(マイクロホンの機能の検査が含まれる)と、音響校正器を使用しない方法(マイクロホンの機能の検査は含まれない)との2種類があります。
JIS Z 8731:1999では、マイクロホンを含めた音響的な検査を行うことが「望ましい」とされていて、この方法を必ず行わなければならないとまでは書いてありません。これに対して、JIS Z 8731:2019は、マイクロホンを含めた音響的な検査(音響校正器を使った検査)を行わなければならないという趣旨に読めます。
2)音響校正器の性能の指定
JIS Z 8731:1999は、音響校正器の性能については触れていませんが、JIS Z 8731:2019では、JIS C 1515に規定するクラスⅠ又はクラスLSのものを使用するという指定がされています。
なお、当事務所の使用している音響校正器は、リオン㈱製のNC74で、この音響校正器は上記の要件を満たしています。
3)音響校正器の校正
JIS Z 8731:1999には、音響校正器の校正のことは述べられていませんが、JIS Z 8731:2019では、3年を超えない周期で定期的に校正されているものであることが要求されています。なお、これと同じことが、環境省の「騒音に係る環境基準の評価マニュアル 一般地域編」(平成27年10月)の8頁にも記載されています。
4)校正は測定の前後に行うか、あるいは測定前のみか
JIS Z 8731:1999では、校正(調査)は一連の測定の前後に行わなければならないと述べられていましたが、JIS Z 8731:2019では、測定の前後とは述べられていませんので、測定の前だけに行えば足りるものと思われます。
JIS Z 8731:1999とJIS Z 8731:2019の校正に関する規定の相違は、以上4点です。これらのうち、1)~3)は校正に関する義務を強化する方向の改正であるのに対して、4)だけは緩和する方向だと思われます。

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