当事務所に測定をお任せいただくことをお勧めする理由
騒音測定業者による測定の問題点
騒音などの被害を受けている場合には、まずはその騒音などの測定をして客観的な証拠を作成することが望ましいことは言うまでもありません。そこで、専門の測定業者に測定を依頼しようとお考えになる方は多いでしょう。インターネットで検索すれば、多数の測定業者が見つかります。
しかし、そのような専門業者による測定結果報告書を多数見てきた経験からすると、専門業者に測定を依頼することはお勧めできません。
その理由として、以下の3点をあげます(理由はこれ以外にもありますが、主要なものを取り上げます)。
1)騒音計の検定合格証明書のコピーが添付されていない報告書が多い。
計量法16条1項により、騒音計で騒音や低周波音を測定する場合には、検定に合格しており、かつ検定の有効期間内である騒音計を使わなければなりません(→騒音・低周波音・振動・悪臭問題の弁護士ブログ)。従って、測定結果報告書に検定合格証のコピーを添付することは必須です。なお、ここにいう検定は、通常は一般財団法人日本品質保証機構に依頼します。
ところが、測定業者の作成した測定結果報告書で、使用した騒音計の検定合格証のコピーが添付されているものはほとんどありません。
2)測定条件が明記されていない報告書が多い。
測定場所(騒音計を設置した場所)の高さや、壁などからの距離が明示されていない報告書が多いです。中には、「JIS Z 8731に従って測定した」と記載のある報告書もありますが、JIS Z 8731の規定は幅のあるものであり(たとえば、高さは1.2メートル~1.5メートルと定められています)、単に「JIS Z 8731に従った」と書いただけでは、具体的な測定条件がわかりません。
3)騒音の測定値を比較すべき対象である、規制基準あるいは環境基準の具体的な数値や、その根拠(法令や条例等)が明記されていない。
騒音に関する公的な基準として、規制基準と環境基準の2種があり、規制基準にはさらに法律によるものと条例によるものとがあります。これらのうちのどれを比較対象として選択したのかや、その理由が記載されていない報告書が少なくありません。中には、基準値すら記載のない報告書もあります。
後で具体的に述べるように、当事務所の弁護士が依頼を受けて測定をする場合には、このような問題点のない測定報告書を作成します。
なお、地方公共団体(区市町村)の多くは騒音計を貸してくれますが、地方公共団体が所有している騒音計には、検定合格証明書が付属していないか、付属していても期限切れのものが多いです。また、被害者御自身が測定しても、信用性ある証拠を作成することは困難です。測定は弁護士にお任せいただくようお願いします。
騒音測定の方法
他の騒音との分別
騒音の測定はリオン株式会社製の精密騒音計NA-28を用いますが、騒音測定の場合には、騒音計で音を測定するだけでは足りません。
なぜなら、私たちの生活の場では、多種多様な音が頻繁に発生していますが、騒音計は音量を記録するだけですので、騒音計の測定データからは、測定された音のうちでどれがその騒音(問題にしている騒音)なのかということが全くわからないからです。
そこで、騒音計で音量を測定するのと平行して、ビデオカメラによって、音自体を録音する必要があります。ICレコーダー等で音だけを録音するのでなく、必ずビデオカメラで音声と映像の両方を記録します。音だけでは、それが被害者の自宅内(あるいは敷地内)で録音されたものかどうかがわからないからです。
そして、測定終了後、騒音計の記録した音量をソフトウェアで処理して作成したグラフ(横軸に時刻、縦軸に音量[何デシベルか]を示したグラフ)に記録された個々の音が、問題にしている騒音なのかどうかを検討し(その検討には、上記のビデオカメラの映像と音声を活用します)、その結果をグラフに「○」(問題の音である)や「×」(問題の音ではない)等の記号で示します。
このようにして初めて、「問題にしている騒音の音量は何デシベルか」ということについて、客観的で信用性ある証拠を残すことができるのです。
ただし、このような測定をするためには、依頼者の方の御協力が不可欠です。
具体的には、以下のことをお願いします。
1)測定中、御自宅内で、いつ問題の音が発生したかを正確に(特に、瞬間的・単発的な音については、アバウトな記録ではなく、電波時計を見ながら秒単位で正確に)記録してください。記録用紙は弁護士が用意します。測定終了時に、その記録を弁護士にお渡しください。
2)測定終了後、①騒音計が記録した騒音の測定値のグラフ、②測定中ずっと録音・録画していたビデオカメラの音声・映像を収めたポータブルハードディスク等の記録媒体、③測定中に御本人に御作成いただいた騒音の発生記録のコピー、の3点をお送りしますので、②と③を活用して、①のグラフの中で、問題となっている音が記録されている箇所に○印をつけていただいた上で、御返送ください。
弁護士は、そのグラフを元に、測定結果報告書を作成します。
従って、当事務所の作成する騒音の測定結果報告書は、「依頼者御自身が感知し、記録された騒音を、騒音計による測定及びビデオカメラの音声・映像によって証拠化する」という趣旨のものですので、御理解と御協力をお願いします。
ビデオカメラによる測定状況の撮影
前記の通り、騒音そのものをビデオカメラの映像と音声で記録しますが、それ以外に、測定の開始時と終了時にも、その状況をビデオカメラで記録します。
具体的には、三脚で設置した騒音計の位置(騒音計のマイクロホンの床や地面からの高さや、壁などからの距離)を測定している場面や、騒音計を音響校正器で校正(騒音計が正確に作動しているかどうかを、特別の機器を使ってチェックすることです)している場面、騒音計の画面を見ながら設定を確認している場面等を撮影し、記録します。そして、この際、電波時計(正しい日時を表示していることを表すマークが出ているもの)を一緒に撮影し、測定の日時も客観的に記録します。騒音計の時刻表示が正確であることも、電波時計を使ってチェックし、その場面もビデオカメラで撮影します。
このように測定状況をすべて記録することによって、被害者から依頼を受けた弁護士の測定であっても、客観性・信用性の高い測定記録を作成することができます。
測定期間
問題にしている騒音がいつ発生するかがほぼ正確に予想できる場合(鉄道の騒音はこれにあたります。また、工場の騒音はこれにあたる場合が多いでしょう)には、数時間あるいは1日測定すれば、その騒音を記録できると思われますので、測定中ずっと弁護士が現地に滞在して測定・記録します。
しかし、いつ発生するかが不確定な騒音(たとえば、マンションの上階から発生する生活音)は、1日だけではその騒音を確実に記録できるとは限りませんので、騒音計とビデオカメラを設置して稼働させた上で、弁護士は退去して、連続的に測定・撮影を行い、数日後に再度御訪問して騒音計等を回収し、騒音計の記録した音のデータやビデオカメラの映像・音声を分析するという方法をとります。
依頼者の方へのお願い
1 前述の通り、依頼者の方には、測定期間中、問題の騒音が発生した日時を正確に(瞬間的・単発的な音については秒単位で)記録していただくようお願いします。測定終了時に、その記録をお渡しください。
測定期間中は通常通りの生活をされてかまいませんが、外出中・就寝中等、上記のような記録がない時間帯については、騒音の証拠化はできませんので、あらかじめ御了承ください。
2 これも前述した通り、 測定終了後、①騒音計が記録した騒音の測定値のグラフ、②測定中ずっと録音・録画していたビデオカメラの音声・映像を収めたポータブルハードディスク等の記録媒体、③測定中に御本人に御作成いただいた騒音の発生記録のコピー、の3点をお送りしますので、②と③を活用して、①のグラフの中で、問題となっている音が記録されている箇所に○印をつけて、御返送ください。
測定結果報告書の内容
測定結果報告書の内容は、以下の通りです。
- 測定の目的、日時、場所、測定方法等の説明
- 騒音の測定結果をソフトウェアで分析した結果のグラフ
このグラフには、御本人の意見及び弁護士の分析に基づき、グラフに記録されている顕著な音が、その事案で問題となっている音かどうかを判断した結果も記載します。 - 測定結果の分析、とくに、問題となっている音の測定値が法令の基準値を超えているか否か
- 測定の開始及び終了の状況並びに測定中の騒音計の画面を撮影したビデオカメラの映像及び音声を記録したSDカード、ポータブルハードディスク等の記録媒体
- 上記4の映像・音声の内容を文章化した一覧表
- 騒音計の検定合格証及び音響校正器の校正証明書の写し
低周波音測定の方法
騒音と低周波音の性質の違い
低周波音測定と騒音測定の最も大きな違いは、音の性質です。
騒音のところで述べた通り、騒音の場合には、私たちの生活環境においては、その事案で問題にしている騒音以外にもいろいろな騒音が発生し、騒音計で記録されますので、騒音計の記録した音のうちのどれが問題となっている騒音であるかを判別する作業が必須となります。
これに対して、低周波音の場合には、生活環境の中で多数の低周波音が出ているということはほとんどありません。そして、低周波音による被害が問題となることの多い、室外機やエコキュート等から発生する低周波音は、一定時間(十数分から数十分)ごとに、稼働と停止を交互に繰り返すのが通常ですので、グラフ上に明瞭に記録され、他の騒音と容易に識別することができます。
このため、低周波音測定では、騒音測定とは異なり、音そのものをビデオカメラで記録して、騒音計の記録したデータとビデオカメラに記録された音とを照らし合わせて分析する必要は通常はありません(そもそも、低周波音は非常に低い音のため、ビデオカメラで録音した音声の中では低周波音ははっきりわからないことが多いです)。
もっとも、低周波音測定でも、測定の開始から終了まで、ビデオカメラで騒音計の画面を撮影します。これは騒音測定と同様です。
ただ、低周波音の場合には、測定結果報告書に添付するビデオ動画は、一部の測定時間帯についてのみです。これは、測定結果報告書に添付するグラフ上に示された低周波音測定のデータが、捏造されたものでないことを示すことが目的です。従って、騒音測定のように、音そのものを記録することが目的ではありませんので、測定期間の全部についての動画を添付する必要はありません。
また、騒音の測定と同様に、測定期間中は、問題の音の体感状況を依頼者御本人に記録していただきますが、低周波音は騒音のように瞬間的・単発的な音ではありませんので、騒音のように、秒単位で厳密に記録していただく必要はありません。「何日の何時何分頃から何時何分頃まで、低周波音を感じた」という程度の記録で結構です。
なお、低周波音を感知したときと感知しないときとの比較(「感知したときには低周波音の測定値が高く、感知しなかったときには測定値が低い」という対応関係があるかどうか)が重要ですので、低周波音を感じたときだけでなく、感じなかったときについても積極的に記録してください。
騒音と異なり、低周波音の場合には、測定後、御本人に、測定結果のグラフの中のどの音が問題にしている低周波音であるかをチェックしていただく必要はありません。前記の通り、低周波音はグラフ上で明確に判別することができるからです。
低周波音の「参照値」と「感覚閾値」
もう一つ、低周波音と騒音の相違点として、騒音については法令上の基準値がありますが、低周波音にはそれがないということがあげられます。
低周波音については、それに代わるものとして、環境省が公表している「参照値」や、国際規格による「感覚閾値」が、被害が発生するかどうかの目安として用いられます。
このため、低周波音の測定結果報告書では、騒音のように測定値と法令上の基準値の比較ではなく、測定値と「参照値」や「感覚閾値」を比較した結果を記載します。
ただし、参照値や感覚閾値は、統計的な値に過ぎず、被害を訴えている人本人の感覚と一致する保証は何もありません。従って、これらは、大まかな目安(具体的には、測定値が、参照値や感覚閾値よりも10デシベルあるいは20デシベルも低い値である場合には、人に低周波音が感知される、あるいは低周波音が人の身体に悪影響を生じさせる可能性は小さい、と解される)としての意味はありますが、厳密な基準値(具体的には、測定値が参照値や感覚閾値を数デシベル下回っただけで、低周波音による人への影響は生じることはない、と解釈する)ととらえるのは適切ではありません。
それよりは、本人の体感調査の結果のほうがはるかに重要です。体感調査は、被害を訴えている人本人の低周波音に対する感覚を調べる調査だからです。体感調査の結果、御本人の低周波音の感知状況と、客観的な低周波音の測定値の変動との間に対応関係が認められれば、御本人が低周波音を感知していると推定でき、御本人の身体的症状の原因が低周波音であることも推定できます。
他方、御本人の低周波音の体感状況と、客観的な低周波音の測定値の変動との間に対応関係がなければ、御本人は低周波音を感知していないと考えられます。この場合には、低周波音が御本人の身体的症状の原因であるという主張をすることは困難です。
このような、体感調査の結果からわかることも、測定結果報告書に記載します。
以上に述べたこと以外は、低周波音の測定方法や測定結果報告書の内容は、騒音についての測定方法や測定結果報告書とおおむね同じです。
低周波音の発生源を調べるための測定
低周波音の発生源を調べることを目的とする測定を行うこともあります。具体例として、近隣の住宅に設置されているエアコン室外機が低周波音の発生源であるかどうかを調べるための測定をする場合には、次のような方法で行います。
1)騒音計を2台準備し、1台は低周波音被害を訴えている人の自宅内に三脚で設置し、もう1台は低周波音の発生源と疑われているエアコン室外機のそばに三脚で設置します。そして、2台の騒音計で同時・連続的に低周波音を測定します。
2)問題の機械の所有者にお願いして、その機械を稼働させたり、停止させたりしてもらいます。
3)被害者の方には、自宅内で、低周波音の体感状況(「今、低周波音を強く感じる」「今は低周波音が弱い」「今は低周波音を感じない」とかいったこと)を、時刻とともに記録してもらいます。
4)測定終了後、①2台の騒音計による低周波音の測定値の変動に対応関係が認められるか(認められれば、問題の機械から発生した低周波音が被害者宅内に伝わってきていると推定できます)、②被害者の記録した低周波音の体感状況が、被害者宅内の低周波音の測定値の変動と合致しているか(合致していれば、被害者は自宅内の低周波音を感知していると推定できます)を分析し、被害者に悪影響を及ぼしている低周波音が問題の機械から発生しているものかどうかを判断し、測定結果報告書を作成します。
ときには、低周波音の発生源ではないかと疑われている機械が複数存在する場合があります。この場合には、機械の稼働-停止の組み合わせを変えて、いろいろな稼働パターンで実験(測定)する必要があり、複雑になりますが、原理は上に書いたことと変わりません。
このような測定(実験)をするためには、問題の機械(低周波音の発生源ではないかと疑われている機械)を稼働させたり、停止させたりしてもらう必要がありますので、その機械の持主に協力してもらう必要があります。
また、被害者に低周波音の体感状況を記録してもらうにあたり、被害者が機械の稼働ー停止をどのようなタイミングで行うかを知っていては意味がありませんので、それは被害者に知らせないで行います。また、被害者が、自宅に設置されている騒音計を見て、低周波音の測定値を知ることができたのでは同じく意味がありませんので、測定中は被害者には騒音計を見ないようにしてもらいます。
このような、機械の持主に御協力いただいて実施する測定の場合には、測定時間は数時間(多くの場合は1~2時間)で足りることが多いです。前述したような数日間の連続測定の必要はありません。
振動測定の方法
振動の測定には、リオン株式会社製の振動レベル計VM-53Aを使用します。この機器は、騒音や低周波音を測定するためのNA-28と同じく、振動計を現地に数日間設置して振動を記録し、後日振動計を回収して、振動計の記録した振動をソフトウェアで分析するということができます。
振動についても、依頼者の方に、「何月何日の何時何分から何時何分まで振動を感じた」ということを記録していただきます。公害被害として問題になる振動は、騒音のような瞬間的・単発的なものではなく、ある程度の時間(少なくとも数分間)継続するものですので(この点は低周波音と同じです)、騒音のように秒単位で記録していただく必要はなく、「何日の何時何分頃から何時何分頃まで振動を感じた」という程度の記録で結構です。
また、振動計を設置し、測定を開始するまでの状況や、測定を終了する際の状況、さらには測定中の振動計の画面をビデオカメラで撮影します。そのうち、測定結果報告書に添付するのは、測定の開始時と終了時の動画及び測定期間中の一部の時間の動画です。これは低周波音の測定の場合と同様です。
測定費用
測定のための業務量は、個々の事案によって大きく異なります。たとえば、騒音・低周波音・振動のうちの一つだけを測定するのか、あるいは2つないし3つを測定するのか、騒音計を何台使うのか、測定期間はどのくらいか(数時間だけあるいは1日だけか、それとも数日か)、ビデオカメラで記録した音と測定データを個別に照らし合わせてチェックする必要があるかどうか、といったことによって、業務量は左右されます。
このため、測定費用については、20万円~35万円(消費税別)の範囲内で、個々の事案の性質によって決めます(その他、交通費や、報告書に添付するポータブルハードディスク等の記録媒体の購入費用等の実費及び出張日当の御負担をお願いします)。多くの場合には、測定費用の見積書を作成してお渡ししますので、その見積書をご検討いただき、測定をご依頼いただくかどうかをお決めください。