Archive for the ‘全記事’ Category

羽田空港の新飛行ルート、取り消しを求めて提訴

2020-06-27

羽田空港の新飛行ルートの実施を決めた国の決定は、周辺住民を騒音や落下物、排ガスによる危険にさらすもので違法であるとして、6月12日に、新ルート周辺住民29名が決定の取り消しを求める行政訴訟を東京地裁に提起しました(6月13日付朝日新聞朝刊)。

新飛行ルートについては、3月27日付の日経ビジネス電子版に、「羽田は世界でいちばん危険な空港になる」というタイトルの、元日本航空機長で航空評論家の杉江弘氏のインタビューが載っています。なぜ世界で一番危険かというと、降下角(最終的な着陸態勢に入る最終進入地点と滑走路上の着陸地点を結んだ角)が、現行の3.0度から3.45度へと急になり(世界標準は3.0度)、パイロットにとってはまるで地面に突っ込んでいくような感覚になるからだそうです。

その他にも、このインタビューには背筋が寒くなるような話がいろいろ載っています。

新飛行ルートについては、騒音被害の問題以外にも、問題点が山積みのようです。

保育所の騒音被害に対する訴えが退けられる

2020-06-20

6月18日に、東京地裁は、東京都練馬区の住民が近隣の保育所からの騒音について差止めや損害賠償を求めた訴訟について、訴えを棄却する判決を言い渡しました(6月19日付朝日新聞朝刊)。

騒音被害を訴える訴訟では、原告(つまり被害者側)が勝訴した事例がマスメディアで報道されることはこれまでしばしばありましたが、原告が敗訴した裁判が報道されるのは珍しいと思います。

この裁判で気になるのは、東京都の環境確保条例との関係です。環境確保条例の定める騒音の規制基準は、騒音の種類や発生源を問わずに適用されるのが原則ですが、2015年の改正により、保育園や幼稚園等からの子供の声などには規制基準が適用されないことになりました。

これは、保育園や幼稚園等の騒音については規制を緩和するという姿勢の現れと思われます。このような東京都の姿勢が、裁判所の判断に影響を及ぼすのかどうかが気になります。

また、騒音紛争において、受忍限度の判断はさまざまな事情を総合的に考慮してなされるものですが、実際問題としては、その音量が法令上の規制基準値を超えているかどうかが重要視されます。上記のように、保育園や幼稚園等の騒音には環境確保条例の規制基準値が適用されないと明記されている中で、裁判所が保育園や幼稚園等の騒音の受忍限度の判断に際し、この規制基準値を考慮するのかどうかも注目されます。

報道の一部には、今回の判決が受忍限度の判断に際して環境確保条例の規制基準値を考慮したと述べたものもあります。

今回の判決が、判例雑誌や判例データベース、あるいは裁判所の公式サイトの判例紹介に掲載されることを期待したいと思います。

振動や音による害虫防除方法・・影の面もあるのでは?

2020-03-08

3月2日付の朝日新聞に、『(科学の扉)「音」で害虫だまし討ち 点滴を装い…減農薬へ新手法、「振動』も活用』という記事が載っています。

農薬の使用量を減らすための一つの方法として、振動や音を使って害虫をだまし討ちする方法が研究されているという内容で、次のような具体例があげられています。

・ブドウの病気を媒介する害虫であるヨコバイのオスがライバルのオスの求愛を邪魔するために出す「妨害振動」をまねた振動を人工的に発生させてブドウの木に伝え、ヨコバイの数を減らすことに成功した。

・トマトの害虫であるオンシツコナジラミの防除のため、金属の棒を振動させ、トマトの茎や葉に伝えることを繰り返すと、振動がストレスとなり、コナジラミの産卵が抑えられて幼虫の数が減った。

・イチゴの害虫であるハスモンヨトウと呼ばれるガが嫌う、コウモリが獲物に狙いをつけたときに出す超音波を発生させることによって、産卵を減らした。

この記事は、これらの方法が、農薬の使用量を減らし、環境に配慮した害虫防除方法であるという明るい面だけを述べています。しかし、私は、この手法には影の面もあるのではないかという危惧を感じます。

振動や音が虫にストレスを与えるものであるならば、人間にも同じような影響が生じることがあり得ます。また、もっと怖い想像をすれば、この手法を応用した兵器を開発することも可能ではないでしょうか。

私はときどき、高周波の音による嫌がらせを受けているという御相談を受けることがあります。そのような経験を持つ者として、このニュースは無条件に歓迎できるものとは言えないな、という印象を持ちました。

羽田空港新ルートの騒音問題

2020-02-23

羽田空港の新ルートが3月29日から運用開始される予定だそうで、その試験飛行が7日間にわたって行われたのですが、その際、住民から騒音に関する苦情や問い合わせが、国土交通省の専用ダイヤルに1日あたり約100件あったと報道されています(2月19日付朝日新聞朝刊)。

その記事によれば、国土交通省は、騒音の測定結果についておおむね想定どおりだったとコメントしているそうですが、これはとんでもない話ではないでしょうか?

試験飛行で計測された音量の瞬間最大値は、どの場所でも70デシベル台後半、最大で94デシベルにもなっています。しかも、測定場所の中に小中学校が4校あり、音量が最大なのは羽田小学校の76~85デシベルだとのことです。

この音量の下で、まともに授業ができるとは思えません。校舎の防音工事等の対策がとられるのかもしれませんが、そもそも、国はこの新ルート計画を発表したときに、住民に騒音被害が生じないようにすると言っていたのではなかったでしょうか? この測定結果を見て「おおむね想定どおり」などと涼しい顔で言ってもらっては困ります。

この新ルートの騒音問題については、今後、注視していく必要があります。

振動計を変えました

2019-09-29

当事務所では、これまで、振動計はリオン株式会社製のVM52を使用してきましたが、このたび、同じくリオン株式会社製のVM53Aを購入し、今後の振動測定はすべてこのVM53Aを使用することにしました。

VM52とVM53Aの違いは、VM52では、「振動計を数日間設置して振動の測定データを記録し、後でその測定データを分析する」ということができないのに対して、VM53Aではそれができるという点です。

VM52では、振動データを記録する方法は、その場でレベルレコーダ(少しずつ動いていくグラフ用紙の上に、記録ペンが測定データをグラフの形で記録する機械)で記録するという方法しかなく、数日間振動計を設置してデータをとるということはできませんでした。

しかし、VM53Aでは、内蔵のコンパクトフラッシュカードに測定データを記録し、後でそのデータを専用のソフトウェアで分析することができます。従って、依頼者の御自宅に数日間振動計を設置して振動データを記録し、後でそのデータを分析するということができます。

騒音については、従来から、リオン株式会社製の精密騒音計NA28を用いて、そのような測定方法をとることができたのですが、振動については従来はできませんでした。しかし、VM53A を購入したことによって、振動についてもこの方法がとれるようになりました。

NA28が2台体制になったこと(この効用については、騒音計2台体制になりましたを御参照下さい)に加えて、振動についても、依頼者の方の御要望にお応えしやすくなりましたので、積極的に振動の測定を御依頼いただきたいと思います。

 

騒音計2台体制になりました

2019-08-24

当事務所では、従来、リオン株式会社製の精密騒音計NA-28を1台保有し、これで騒音や低周波音の測定を行ってきましたが、このところ、1台だけでは足りないと感じることが多くなったため、このたび、同じNA-28をもう1台購入し、2台体制となりました。

購入したNA-28は、中古品ですが(高級な騒音計はかなり高価ですので、車などと同様に中古品が流通しています)、2022年12月までの検定がついており、付属品や取扱説明書も揃っています。

1台体制のときと比べて、2台体制になると、次のようなメリットがあります。

1)騒音や低周波音の測定をする場合には、たいていは依頼者のお宅に数日間(長いときは1週間程度)騒音計を設置して、連続測定を行います。このため、1台体制では、ある依頼者のお宅での測定中は他の依頼者のための測定はできませんが、2台であれば、1台で測定中でも、もう1台で測定することができます。従って、依頼者に測定実施をお待ちいただくことが減ります。

2)原則として、騒音は屋外で測定し、低周波音(身体的影響が問題になる場合)は屋内で測定します。このため、騒音と低周波音の両方の被害を訴えられる依頼者の場合、騒音と低周波音を同時に測定するためには、2台の騒音計を屋内と屋外にそれぞれ設置する必要があります。騒音計が2台あれば、このような場合にも容易に対応できます。

3)音の発生源について争いがあるとか、あるいは発生源の推定はできているが確実ではないという場合があります(特に低周波音については、そのような場合がよくあります)。この場合に、発生源を特定するためには、発生源と疑われている機械のそばと、被害を訴えている方の自宅内にそれぞれ騒音計を設置し、機械を稼働させたり停止させたりしながら測定して、機械の稼働・停止と、2か所における音の測定値の変動に対応関係があるかどうかを分析することが有効です。このような測定をするためには、騒音計が2台必要です。従って、騒音計が2台あれば、このような測定が容易にできます。

騒音計をレンタルする業者は多数ありますので、保有する騒音計が1台であった従来でも、もう1台をレンタルすれば、上記のような状況には対応可能であったのですが、その場合には依頼者にレンタル代をご負担いただいていました。しかし、今後は2台体制ですので、レンタル代をご負担いただく必要はなくなりますし、レンタルの手続をする必要がないので、上記のような状況に迅速に対応できます。

従って、これまでにも増して、測定を依頼される方の御希望に沿いやすくなりますので、積極的に騒音や低周波音の測定を御依頼いただきたいと思います。

 

国会図書館で ISO389-7を調べた話

2019-08-02

※本稿が念頭に置いているのは、低周波音の身体的影響です。

低周波音に関する最も権威のある指標は、2004年に公表された環境省の参照値(「低周波音問題対応の手引書」に記載されています)ですが、エネファームやエコウィルに関する消費者庁の報告書(2017年)では、感覚閾値(聴覚閾値)が重視されています。

消費者庁は、環境省の見解とは異なり、「低周波音の人に対する影響の指標としては、参照値よりも、(参照値より低いレベルである)感覚閾値のほうが重要であり、低周波音の測定値が感覚閾値以上であれば、低周波音の人に対する影響が生じうる」という考えです。ただ、環境省も、参照値よりも低いレベルの低周波音であっても、人に対する影響が生じうることは認めています。

感覚閾値は、国際規格であるISO 389-7によって定められているのですが、不思議なことに、消費者庁の報告書には、感覚閾値の具体的な数値は記載されていません。

一方、私の著書である「騒音・低周波音・振動の紛争解決ガイドブック」の226ページには、ISO 389-7による感覚閾値の数値を書きましたが、これは中野有朋氏の『あの音が私を苦しめる!? 低周波音・超低周波音トラブル解決法』の47ページに記載されていたもので、そこには20ヘルツから80ヘルツまでのバンドについての感覚閾値のみが記載されていました。

しかし、前記の消費者庁の報告書では、100ヘルツ及び125ヘルツの音(これは「低周波音」の領域を外れますので、「音」と書きます)によっても、人に対する身体的影響が生じうるということが述べられています。

以上の次第で、100ヘルツ及び125ヘルツの音のISO 389-7による感覚閾値の数値が知りたいと思ったのですが、インターネットで検索してみても、ISO 389-7による感覚閾値を各バンドごとの正確な数値で示した文献はヒットしません(感覚閾値のグラフは見つかるのですが、グラフでは正確な数値がわかりません)。

そこで、国会図書館のデータベースで検索してみると、さすがは国会図書館で、ISO 389-7そのものが所蔵されていることがわかりました。ただし、東京本館ではなく関西館に所蔵されているため、東京本館で見たい場合にはインターネットで申し込んで取り寄せてもらう必要があります。取り寄せには数日かかります。

先日、そのようにして取り寄せてもらったISO 389-7を東京本館で閲覧してきました。本来はもっと早くに見るべきものでしたが、初めて見たISO 389-7は、10ページ程度の薄い英語の冊子でした。そして、感覚閾値の具体的な数値が、20ヘルツ~18,000ヘルツの各バンド(1/3 オクターブ)について、小数点以下第1位までの数値で書いてありましたので、知りたかったことを知ることができました。

上記の中野有朋氏の著書では、感覚閾値は整数で示されていたのですが、もともとのISO 389-7では、感覚閾値は小数点以下第1位までの小数です。中野氏がなぜ著書の中で整数に丸めた数値を書いたのかは不明です。

また、私はこれまで、多くの文献にならって「感覚閾値」と呼んできたのですが、英語の表現は”threshold of hearing”ですので,「聴覚閾値」のほうが訳語としては正確です。消費者庁は「聴覚閾値」という表現を使っています。

125ヘルツ以下のバンドについての感覚閾値の具体的な数値は、ISO389-7による音の感覚閾値(聴覚閾値)のページをご覧下さい。

 

横田基地訴訟控訴審判決の低周波音に関する判断について

2019-07-28

6月6日に東京高等裁判所で言い渡された第2次新横田基地公害訴訟の控訴審判決について、私が特に注目していたのは、横田基地周辺を飛行する米軍機から発生する低周波音に関する判断です。

近年の航空機騒音訴訟(社会的に注目されるものは、すべて自衛隊や米軍の基地に関する訴訟です)では、航空機から発生する騒音の被害とあわせて、低周波音による被害が主張されることがしばしばありますが、判決において、騒音による被害と区別して、低周波音による被害が認められた例は多くありません。

第2次新横田基地公害訴訟でも、低周波音による被害を主張しており、控訴審では、弁護団自ら、原告のうちの3名の方の自宅で低周波音の測定を行い、その測定結果報告書を証拠として提出しました。また、低周波音による物的影響(住居内の家具や建具が振動することです)が現に生じているところをビデオカメラで撮影して、その音声・映像を収めたDVDも提出しました。

少なくとも、低周波音による物的影響については、上記のようなはっきりした証拠があるのですから、控訴審判決が認めてくれるのではないかと考えていました。

けれども、控訴審判決では、低周波音による物的影響についても、身体的影響(睡眠妨害や、圧迫感・振動感といったものです)についても、原告ら(住民ら)がそれらの影響を受ける可能性があることは認定できるが、現に影響を受けていることまでは認定できないと判断されました。従って、判決は、原告らが低周波音の影響を受ける可能性があることを騒音による被害の一要素として考慮するにとどめる、という趣旨を述べました。

もしも、低周波音による(被害の可能性でなく)現実の被害があることが認定されれば、損害賠償の金額が増額されたかもしれませんが、上記のように、現実の被害までは認定されず、損害賠償の金額は1審判決と同じでした。

このように、低周波音に関する判断は、非常に残念な、納得できない内容でした。

航空機からの低周波音による被害が個々の基地訴訟において認定されたかどうかという問題については、いずれ騒音・低周波音・振動・悪臭問題の弁護士ブログで整理して書くつもりです。

水中の騒音がムール貝の成長を阻害するおそれ(イギリス)

2019-07-13

イギリスの新聞であるデイリーメール(Daily Mail)に、7月8日付で、船から発生する海中の騒音のためにムール貝がストレスを感じ、成長が阻害されるおそれがあるという記事が出ています(デイリーメールのオンライン版で、検索窓に”mussels”と入れて検索してみてください)。

これは、イギリスの大学の海洋科学者のグループによる研究結果です。それによると、ムール貝は、耳はないけれども、環境中の騒音のレベルの変化を感知することができるそうです。

船から発生する騒音のストレスによって、直ちにムール貝にとって致命的あるいは危険な影響があるわけではないけれども、長期的には、ムール貝の成長が妨げられ、生息数が減少するおそれがあるとのことです。

この記事を見て連想するのは、風力発電の風車の音の影響です。風力発電の風車から発生する騒音や低周波音が人の身体に悪影響を及ぼすおそれがあることは、近年注目されており、このことを考慮して、最近は風力発電設備を陸上ではなく洋上に建設することもあるようです。

洋上に建設すれば、人の身体に対する影響は防げるかもしれませんが、海中の魚などの生物に対して、風車の騒音や低周波音が悪影響を及ぼすことはないのでしょうか。

実際に、風力発電の建設予定地では、漁業関係者から、風車の音による魚への影響を懸念する声があがることがあるようです。このような問題があることには留意しておくべきだと思います。

 

コケコッコー騒音? 仏で論争

2019-07-10

7月9日付朝日新聞朝刊の国際面に、「コケコッコー騒音? 仏で論争」という記事がありました。フランス西部のリゾート地であるオレロン島で、隣家の雄鶏の鳴き声が「騒音」だとして、別荘に夏の間だけ暮らす夫婦が雄鶏と飼い主を相手取り、雄鶏を別の場所に移すよう求める訴えを裁判所に起こしたというものです。

動物の鳴き声に悩まされているという御相談や御依頼をお受けすることはときどきあります。それらの案件で問題となったのは、犬の鳴き声や、鳥の鳴き声などで、ペットとして飼われている動物の他、ブリーダーが事業として飼っている動物の鳴き声の事件もあります。

この記事で面白いのは、飼い主だけでなくその雄鶏も被告になっているらしく、飼い主が「雄鶏には歌う権利がある」と主張しているとのことです。日本では、動物を被告として訴えることはできません。

また、原告は、雄鶏を別の場所に移すことを求めているそうですが、この主張も日本の裁判所では認められません。日本では、動物の鳴き声が騒音であるとして差止めの裁判を起こすとしたら、「何デシベルを超える鳴き声を原告の自宅敷地内に侵入させてはならない」という趣旨の判決を求めることになります(「抽象的不作為請求」と呼ばれます)。原告の被害をなくすためにはそれで必要十分だからです。それを超えて、動物自体を他に移せという請求が認められることはないと思います。

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